近鉄特急「しまかぜ」にスーツケースを載せる

近鉄特急「しまかぜ」にスーツケースを載せる

「しまかぜ」は、2013年にデビューした近鉄の特急列車である。先細りが見え始めた伊勢への観光輸送を盛り返すために多くの新機軸(プレミアムシート、カフェテリア、ロッカーなど)が導入され、やがて登場する新型名阪特急「ひのとり」のベースにもなった車両だ。

しまかぜに大型スーツケースを載せるかたに向けて、荷物棚の大きさやそのほか荷物置き場の状況についてまとめる。

近鉄特急「しまかぜ」にスーツケースを載せる 近鉄特急「しまかぜ」にスーツケースを載せる

しまかぜは6両編成で、1号車・2号車・5号車・6号車の4両が「プレミアムシート」とよばれる座席車である。JRでいえばグリーン車に相当か、それも超えるレベルである。これ以外にあるのは個室とサロンシートで、しまかぜにはいわゆる「普通車」は存在しないが、値段はグリーン車よりも安い。

この日の筆者は大和八木から京都までという、伊勢志摩とは関係のない中途半端な乗車だったが、それでもきちんとおしぼりと記念乗車証が配られた。短時間の乗車でも、こうした気配りで非日常を演出してくれるのはうれしい。

 

近鉄特急「しまかぜ」にスーツケースを載せる 近鉄特急「しまかぜ」にスーツケースを載せる

プレミアムシートのうち、2号車と5号車はオーソドックスな平屋で、1号車と6号車は床が高い展望車両になっている。どちらも料金や座席の作りは同じだが、細かな設備の違いはある。その代表が座席の上の荷物棚だ。

平屋の2号車・5号車のほうが天井が高いだけあって、荷物棚も広々としている。100Lほどある筆者のスーツケースもすっぽりと収まった。この棚なら、大抵の荷物は問題なく載せることができる。

近鉄特急「しまかぜ」にスーツケースを載せる 近鉄特急「しまかぜ」にスーツケースを載せる

一方で展望車両の荷物棚はせまい。高さ30cmはまだマシなほうだが、幅が22cm程度しかなく、スーツケースは機内持ち込みサイズであってもはみ出す可能性がある。

ちなみに筆者のスーツケースの幅は47cmだ。上の4枚の写真をくらべると、平屋と展望車両の荷物棚の違いが分かると思う。

近鉄特急「しまかぜ」にスーツケースを載せる 近鉄特急「しまかぜ」にスーツケースを載せる

では大きな荷物があるときはどうするかというと、最初でも書いたとおり、しまかぜには大小さまざまなロッカースペースがある。これはなかなか画期的な設備で、過去の車両でここまで立派な荷物置き場をもうけたケースは、少なくとも国内ではなかったはずだ。

ロッカーは1号車と6号車にあるので、ちょうど展望車両の乗客にとっては使いやすい。ただし予約制ではないので、ほかの車両に乗る人も利用できる。大きな荷物があるときはまずロッカーに寄って、それから自分の座席に向かうのも手だ。

 

近鉄特急「しまかぜ」にスーツケースを載せる 近鉄特急「しまかぜ」にスーツケースを載せる

ロッカーのサイズはどれも同じに見えて、上段と下段で違いがある。上段の高さは70cmで、80Lくらいのスーツケースまで対応できる。下段のほうが広いので、上段でなんとかなりそうなら上段を使うべきだろう。

近鉄特急「しまかぜ」にスーツケースを載せる 近鉄特急「しまかぜ」にスーツケースを載せる

筆者のスーツケースは高さ75cmなので必然的に下段行きだ。こちらは100Lクラスのスーツケースでも問題なく収まる。

左右は35cm、奥行きは50cmまでならまったく問題はない。それ以上のサイズだと収納できない可能性もあるが、そもそもそこまで大きな荷物を観光列車へ持ち込むこと自体に懐疑的だ(しまかぜの場合は個室に乗るなど、解決策がないこともない)。

施錠方法はすべて鍵式で、空いてるところには番号札のついた鍵がささっている。これは完全に自己管理なので、なくさないように気をつけよう。

近鉄特急「しまかぜ」にスーツケースを載せる 近鉄特急「しまかぜ」にスーツケースを載せる

小田急ロマンスカー(60000形MSE)にスーツケースを載せる

小田急ロマンスカー(60000形MSE)にスーツケースを載せる

小田急60000形(通称:Multi Super Express)は、2008年にデビューしたロマンスカー車両である。北千住発着の「メトロはこね」や御殿場行きの「ふじさん」にも使用される、その名のとおりマルチな活躍のできる車両だ。MSEに大型スーツケースを載せるかたに向けて、荷物棚の大きさやそのほか荷物置き場の状況についてまとめる。

 

小田急ロマンスカー(60000形MSE)にスーツケースを載せる 小田急ロマンスカー(60000形MSE)にスーツケースを載せる

小田急ロマンスカーでは座席の上の荷物棚がやけにせまかったり、そもそもなかったりするケースもあるが、MSEではそのような事態とは無縁だ。もともと天井が高いこともあるが、照明の位置がそれまでの車両にくらべて改善されており、荷物棚にも十分な高さがある。筆者のスーツケースもすっぽりと収まった。

※スーツケースの大きさはこちらに掲載。

小田急ロマンスカー(60000形MSE)にスーツケースを載せる 小田急ロマンスカー(60000形MSE)にスーツケースを載せる

足元置きにもチャレンジしてみる。座席の間隔自体は普通だが、背もたれが薄いので意外と足元は広く、大きなスーツケースでも置くことができる。ただしこれは前の人がリクライニングをしていなければの話だ。ただでさえ足元に置くと窮屈なので、厚さが25cmを超えるものは面倒でも棚に置くべきである。

この座席について思うところがあるので少し…。小田急ロマンスカーでは伝統的にセンターアームレストを省略している。これはJRの特急ではほぼありえないし、このブログでも取りあげた近鉄や南海の特急にも収納式のものがついている。恋人と箱根観光…という場面ならこれでOKだろうが、はっきり言っていまのロマンスカーはビジネス特急だ。ラッシュアワーに増発したり、停車駅を増やしたり、ほかでもない小田急自身がそういう施策を進めている。したがっていまだにセンターアームレストなしにこだわるのは、明らかに手落ちである。

 

小田急ロマンスカー(60000形MSE)にスーツケースを載せる

MSEでは座席の上の荷物棚以外には、専用の荷物置き場はもうけられていない。デッキや通路に置いたらいけないのは当然である。一方、最後部席の後ろは壁にテーブルがついているため、大きなスーツケースは寝かせないと置けないこともある。

MSEより後に製造または改造されたロマンスカーの車両には、数は少ないながらもラゲージスペースがある。いずれはすべてのロマンスカーに荷物置き場が取りつけられる思うが、現時点で設置率は100%ではない。

小田急ロマンスカー(60000形MSE)にスーツケースを載せる 小田急ロマンスカー(60000形MSE)にスーツケースを載せる

ところで、もともとは観光特急として活躍を期待されたMSEには、売店と車内販売の基地を兼ねたカウンターが3号車と9号車にもうけられている…いや、もうけられていた。

こうした車内販売は、観光客に対する付加価値(=長時間乗車の気分転換)として機能するだろう。しかしロマンスカーが観光からビジネスへと軸足を移していくなか、車内販売は駅の売店の利便性にかなわず、次第にペイしなくなっていく。そこに追い討ちをかけたのが新型コロナで、ロマンスカーの車内販売は70年を超える歴史に幕を下ろしてしまった。

したがって3号車と9号車のこの空間は、もはやただのデッドスペースである。MSEのデビューがあと10年遅かったら、この空間は荷物置き場として活躍していたかもしれない。

 

小田急ロマンスカー(60000形MSE)にスーツケースを載せる 小田急ロマンスカー(60000形MSE)にスーツケースを載せる

シャッターを閉じたカウンターの下には、ささやかなショーウィンドウがある。もぬけの殻になっていると思いきや、中には販促用の小物が置かれており、本来の用途とかけ離れてはいるがきちんと活用されていた。

しかもこの小物、温泉たまごや海など一段ごとに沿線をイメージしたものになっていて、それぞれの地名(Hakone-YuMoto, Shinjuku, Katase-Enoshima)から一文字ずつとって車両の愛称になっていたりとなかなか凝っている。役目を終えたショーウィンドウが「静かな余生」を過ごしているかのようだ。

MSEの一世代前の車両"VSE"が2022年に定期運行を終え、2023年の秋には完全に引退する予定である。MSEが後を追うように早期廃車されるか、リニューアルされて末長く走るか、どちらになるかはまだわからない。もちろん個人的には、どこかのタイミングで改造されて、もっと便利な「新生MSE」になることを期待している。