小田急ロマンスカー(60000形MSE)にスーツケースを載せる

 

小田急ロマンスカー(60000形MSE)にスーツケースを載せる

小田急60000形(通称:Multi Super Express)は、2008年にデビューしたロマンスカー車両である。北千住発着の「メトロはこね」や御殿場行きの「ふじさん」にも使用される、その名のとおりマルチな活躍のできる車両だ。MSEに大型スーツケースを載せるかたに向けて、荷物棚の大きさやそのほか荷物置き場の状況についてまとめる。

小田急ロマンスカー(60000形MSE)にスーツケースを載せる 小田急ロマンスカー(60000形MSE)にスーツケースを載せる

小田急ロマンスカーでは座席の上の荷物棚がやけにせまかったり、そもそもなかったりするケースもあるが、MSEではそのような事態とは無縁だ。もともと天井が高いこともあるが、照明の位置がそれまでの車両にくらべて改善されており、荷物棚にも十分な高さがある。筆者のスーツケースもすっぽりと収まった。

※スーツケースの大きさはこちらに掲載。

 

小田急ロマンスカー(60000形MSE)にスーツケースを載せる 小田急ロマンスカー(60000形MSE)にスーツケースを載せる

足元置きにもチャレンジしてみる。座席の間隔自体は普通だが、背もたれが薄いので意外と足元は広く、大きなスーツケースでも置くことができる。ただしこれは前の人がリクライニングをしていなければの話だ。ただでさえ足元に置くと窮屈なので、厚さが25cmを超えるものは面倒でも棚に置くべきである。

この座席について思うところがあるので少し…。小田急ロマンスカーでは伝統的にセンターアームレストを省略している。これはJRの特急ではほぼありえないし、このブログでも取りあげた近鉄や南海の特急にも収納式のものがついている。恋人と箱根観光…という場面ならこれでOKだろうが、はっきり言っていまのロマンスカーはビジネス特急だ。ラッシュアワーに増発したり、停車駅を増やしたり、ほかでもない小田急自身がそういう施策を進めている。したがっていまだにセンターアームレストなしにこだわるのは、明らかに手落ちである。

小田急ロマンスカー(60000形MSE)にスーツケースを載せる

MSEでは座席の上の荷物棚以外には、専用の荷物置き場はもうけられていない。デッキや通路に置いたらいけないのは当然である。一方、最後部席の後ろは壁にテーブルがついているため、大きなスーツケースは寝かせないと置けないこともある。

MSEより後に製造または改造されたロマンスカーの車両には、数は少ないながらもラゲージスペースがある。いずれは全てのロマンスカーに荷物置き場が取りつけられる思うが、現時点で設置率は100%ではない。

 

小田急ロマンスカー(60000形MSE)にスーツケースを載せる 小田急ロマンスカー(60000形MSE)にスーツケースを載せる

ところで、もともとは観光特急として活躍を期待されたMSEには、売店と車内販売の基地を兼ねたカウンターが3号車と9号車にもうけられている…いや、もうけられていた。

こうした車内販売は、観光客に対する付加価値(=長時間乗車の気分転換)として機能するだろう。しかしロマンスカーが観光からビジネスへと軸足を移していくなか、車内販売は駅の売店の利便性にかなわず、次第にペイしなくなっていく。そこに追い討ちをかけたのが新型コロナで、ロマンスカーの車内販売は70年を超える歴史に幕を下ろしてしまった。

したがって3号車と9号車のこの空間は、もはやただのデッドスペースである。MSEのデビューがあと10年遅かったら、この空間は荷物置き場として活躍していたかもしれない。

小田急ロマンスカー(60000形MSE)にスーツケースを載せる 小田急ロマンスカー(60000形MSE)にスーツケースを載せる

シャッターを閉じたカウンターの下には、ささやかなショーウィンドウがある。もぬけの殻になっていると思いきや、中には販促用の小物が置かれており、本来の用途とかけ離れてはいるがきちんと活用されていた。

しかもこの小物、温泉たまごや海など一段ごとに沿線をイメージしたものになっていて、それぞれの地名(Hakone-YuMoto, Shinjuku, Katase-Enoshima)から一文字ずつとって車両の愛称になっていたりとなかなか凝っている。役目を終えたショーウィンドウが「静かな余生」を過ごしているかのようだ。

MSEの一世代前の車両"VSE"が2022年に定期運行を終え、2023年の秋には完全に引退する予定である。MSEが後を追うように早期廃車されるか、リニューアルされて末長く走るか、どちらになるかはまだわからない。もちろん個人的には、どこかのタイミングで改造されて、もっと便利な「新生MSE」になることを期待している。